恩師のニュース

ケニア便りVol10・・・石川剛章先生からの寄稿です。『ケニアの素直な子ども達によりよい教材を』

「ケニアの素直な子ども達によりよい教材を」

ケニアに派遣されて1年と2ヶ月、いろいろなことを感じて活動してきました。その中で一番強いのが見出しの言葉です。「明るくて前を見てる子が多い!」といつも思います。

最初に配属先のことを。「国の発展のために理数科教育の推進を」という目的があって、JICAが支援を始めました。1998年、世界の多くの国々で取り組まれた草分けがケニアでした。私の配属先は、ケニアのみならず、サハラ以南の現職の先生方が研修を受けに来て、それを彼らの地元の学校の先生方に伝えるべく創られた研修施設です。様々なプロジェクトが展開されてきましたが、教員研修の制度設計から建物の建設まで、ほぼすべてに日本が関わってきました。プロジェクトではないボランティアの立場の私ですが、恵まれた環境の中で活動できていると感じます。さらに、初代である前任者の方が、専用で使える実験室の整備から活動の道筋まで用意してくれました。

配属先から私に課された任務は、「新しい教材を開発して、研修に来た先生方や見学に来た生徒達に紹介する」「前任者の方が始められた科学イベントを継続・発展させる」というもの。さらに、「ケニア初の科学館・サイエンスミュージアムの建設」が所長さんと前任者の共通の夢です。私は後10ヶ月ほどしか滞在できませんが、この夢がいいなと思います。「この2人の夢の実現のために、一人ひとりが教材づくりをして、12月のクリスマスサイエンスデーに子ども達に見せよう。その蓄積によって我々は夢に近づくことができる!」と呼びかけています。

一方で、頭を抱えてしまう問題がないわけではありません。私が新しく教材を作る基本は、普段の授業で使えるようにテーマを教科書から選ぶことです。1年生では「井戸」や「車輪」を選びました。どんな模型を作ったら井戸の仕組みが分かり、川が干上がっても水が下にあることを理解してくれるかと考えたり、種類の違う車輪を毎日1個ずつ1ケ月作り続けたりしました。実際に手と頭を使い、周りの人に助けてもらいながら物を作るのは、理数科に関わる我々の「財産」だと思います。

そこで、教科書を読んだわけですが、「これは間違いだよな!」「プライマリースクールの8年間、日本の中学2年生まで、理科で計算問題を1つも扱わないのはまずいんじゃないか?」「結局、セカンダリーでも遅れてしまうから、日本で教えてたこと(私は高校教諭でした)をケニアでは大学で教えることになる!」、なんてことに気付いてしまいました。来年の1月からケニアでは新しい学校制度が始まります。大雑把に言うと、日本と同じように「6・3・3制」になり、中身を大きく変えようとしています。来年から始まる小学校3年生までのカリキュラムはでき上がっていますが、再来年からの中学1年生までの分には少し時間があります。ケニアが変えようとするスピードは、「2年間で7学年分」というように速いですが、この機会に何かできることはないかと考える毎日です。ケニア生活の長い先輩からは、「ケニア山と相撲を取るようなもの」と叱咤激励されます。何とか土俵に上がって、自分からは土俵を下りないようにしたいと思います。

 

 

 

 

(1)訪問した学校で演示実験を披露した後で

 

 

 

 

 

 

 

(2)この前を向く目が私の活動の支え

 

 

 

 

 

 

 

(3)私が頼りにするのはこの先生達