同窓生の今

『特別寄稿』7回生、栗山茂生さん、海外からいただきました。

同窓会員の皆様におかれましては、益々ご健勝のことと思います。

早速ですが、公認会計士としてご活躍をされ、現在マレーシアに在住されています、栗山茂生氏(7回生)に「海外から見た日本」というテーマで、原稿の依頼をしたところ快くお受け下さり、原稿を寄稿して頂きました。

同窓会のホームページでは、会員の皆さんのご活躍、季節の折々に感じたこと、身の回りで起きた出来事等々、「同窓生の今」を沢山掲載していきたいと考えています。今回は、海外に在住して見えるという意味で、栗山氏にテーマを依頼して寄稿して頂きましたが、是非皆さんの情報をお寄せ頂き、このホームページが、会員同士の交流の場に出来ればと思っています。

暑い時期ですが、同窓会員の皆様方にはお体をご自愛して頂き、益々のご活躍、ご発展を祈念いたします。

平成29年8月3日 同窓会会長 澤田龍一

     

「海外から見た日本」

                                                                    栗山茂生

グローバルな時代、海外から見た日本についての寄稿の依頼が同窓会の澤田龍一会長からありました。僭越ですが、簡単に私見を同窓会の皆様に申し上げてみたいと存じます。

急速に進む少子高齢化、一千兆円を超える国の借金(国債等)、長引く平成デフレ経済、現役世代比率の漸減に伴う公的年金制度や社会保険制度の持続可能性への危惧などを背景として、日本の将来について悲観的な見方もあるかと存じます。

しかしながら、日本の将来については、過度に悲観する必要はないと考えています。

現在、日本は、総合的に見れば世界でもトップクラスの暮らし易い国であり、平和で安心して生活できる社会であり、さらに、今後数十年間は、現在の恵まれた水準を維持できる蓋然性が高いと考えています。

遠くない将来、日本の財政が破綻し、国民が苦しむのではないかと心配する向きもありますが、19世紀のイギリスは、国債発行残高の対GNP比率が、最悪期で約288%でしたが、20世紀初頭に、約80年をかけて財政再建をしています。

また、同じく1940年代後半のイギリスは、国債発行残高の対GDP比率が250%を突破しましたが、インフレーションの進行とともに約30年をかけて財政再建を果たしています。(参考 日経ビジネス 2010.9.21)

財務省が発表している日本の債務残高の対GDP比率は2016歴年で232.4%ですので、過去のイギリス並みといっても良いでしょう。

上記でイギリスが財政再建に成功している要因として、イギリスの国債がほぼ100%ポンド建てであった事が挙げられますが、これは、現在の日本も同じで、日本の国債等はほとんどが日本円建てです。

また、日本は、国際収支黒字国を長く続けて来ましたので、その結果、平成26年末で366.9兆円の対外債権国になっており、同時点では世界最大の債権国です。

さらに、平成25年4月からの日本銀行による異次元緩和政策の継続により、日銀による日本国債の保有が進み、日銀の保有する国債は、発行残高の4割を超えており(日本経済新聞、2017年2月8日)、さらに現在も日銀による市場からの既発国債の大量購入が進んでいます。

この点につき、日銀による国債の大量購入等の金融緩和政策の結果、既に日本国債暴落のリスクが実質的に解消されているとの指摘があります。(参考 日本経済新聞 2016年6月7日 ヘリコプター・マネーの是非 アデア・ターナー・英国金融サービス機構、元長官)

この、既に日本国債暴落のリスクが実質的に解消されているとする見解は、誠に説得力のある見解であると思われます。

これで日本も、過去のイギリスの様に、安心して時間をかけて財政再建を進めていくことが可能な段階に至ったのではないかと考えております。

日本国の財政は、破綻するリスクが可能な限り抑えられたことにより、放散することなく、いずれ財政再建が果たされていくものと考えております。

また、日本の公的年金制度や公的医療保険制度ですが、世界的に見ても優れた制度であります。公的年金制度について言及すれば、日本国内では国民年金、厚生年金等より優れた商品はありません。民間の生命保険会社の同種の商品よりは、大部分の人に有利ですので、先ず、受給資格の確保、受給額の充実化を図った方が有利です。

日本は、勤勉で誠実な国民を有するアジアの大国であり、地政学的にも他国と陸続きの国境がない海洋国家であり、この点は特に恵まれていると思います。

私は、日本の将来については、全く悲観しておりません。今から数十年間の人口減少は避けられそうもありませんが、それでも国力は維持し、より豊かな社会が実現されるであろうと考えております。

 

* 栗山茂生氏 日本公認会計士協会・会員番号6836番、平成19年にシンガポールに移住。平成21年よりマレーシア在住。